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Artist Interview
Portraying the tough but humor-filled lives of an ethnic minority   An interview with the Japan-resident Korean writer Chong Wishing
マイノリティたちのタフでコミカルな生き様を描く在日コリアンの人気作家・鄭義信
なつのしま、はるのうた
なつのしま、はるのうた
椿組公演
『なつのしま、はるのうた』

作:鄭義信
演出:松本祐子
(2007年3月28日〜4月1日/東京・下北沢「劇」小劇場)
チェサ─祭祀─としての演劇

──鄭さんは、以前に書かれたエッセイ「さすらい論─さすらっていった人たちへのささやかな祭祀(チェサ)」(「ロジックゲーム」所収。1992年、白水社)の中で、「演劇はチェサに似ている」と云われています。「チェサ」(*)というのは死者を迎える韓国独特の法事のことですね。
はい。韓国独特の風習、祭祀です。今はそんなに夜遅い時間までやったりするところはないと思いますが、僕の子どもの頃は、深夜12時から始めて、家に訪れる亡くなったご先祖さまのために三度ぬかずくというのをずっとやるんです。おはしの位置を置き換えたり、ご飯出したり、ごちそう出したり、最後はお茶も出す。あたかも目の前に死者がいるかのごとくにふるまう。それで三度三度ぬかずいて、先祖が帰った後にようやく並べたごちそうが食べられる。
お芝居というのは、何か「チェサ」に似ているなと。

──ありったけのごちそうを並べて、さすらっていく人たちを一時もてなす。都市をさすらっている無数の無縁仏にありったけのごちそうを並べてもてなすののが、演劇ではないかと。
はい。おこがましくも、自分はそういうぐあいに思っているので、一生懸命やってしまうのかもしれません。

──このエッセイは15年前に書かれたものですが、鄭さんは変わっていないなあと思います。舞台で死者と生者を出会わせる祭祀をずっとやっているなあと。
だんだん、死のにおいが強くなってきたなとは思います。自分が歳を取ってきたこともありますし、周りで死んでいった人もいますし。やっぱり金久美子の死はショックでしたから。
今年、ついに50歳になったんです。でも精神年齢変わらないから(笑)。人間って変わらないですね。15のときに早く30になりたいと思い、今の僕の歳になったら人生はバラ色で、すべては約束されているように思われたんですが、そんなことはなかった。50になっても変わらなくて、世間の人に申し訳がない(笑)。

──でも作家って、50歳ぐらいからがおもしろいんじゃないですか。
そうかもしれませんね。肉でも果物でも腐りかけがおいしいですから(笑)。そろそろ熟成期に入ってくるから、そのときにくだらないことをやりたいなあと思います(笑)。

*チェサ
韓国独特の儒教的な伝統行事(祭祀)。すべての子孫が長男の家に集まり、先祖の霊を祀る儀式で、生きている間にし尽くせなかった親孝行を命日の日に補い、祖先の冥福と一族の繁栄を願うというもの。チェサのために特別な食べ物を大量に準備し、儀式が終わった後、親族や隣近所の人たちと分け合って食べる。昔は男性のみが参加を許されていた。
 
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