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桐竹勘十郎
桐竹勘十郎(きりたけ・かんじゅうろう Kiritake Kanjuro)
1953年大阪生まれ。父は人間国宝の人形遣い、二世桐竹勘十郎、姉は俳優、三林京子。1967年文楽協会人形部研究生となる。三世吉田簑助に師事。翌年、初舞台。父から学んだ立ち役、名女方の師匠から学んだ女方、男女の人形を遣いこなす。2003年、三世桐竹勘十郎を襲名。公演のほか、ワークショップや大阪府能勢町の「能勢人形浄瑠璃鹿角座」の指導、新作公演など活動は多彩。NPO法人人形浄瑠璃文楽座著作権担当理事でもある。
『曽根崎心中』
曽根崎心中
曽根崎心中
曽根崎心中
©河原久雄
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Artist Interview
2008.6.20
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Kanjuro Kiritake III, a leader of the rising generation of puppeteers in Japan's world renowned puppet theater, Bunraku  
世界に誇る日本の人形劇「文楽」 人形遣いのホープ三世桐竹勘十郎に聞く  
三人遣いの「人形」、浄瑠璃を語る「太夫」と「三味線」の三者が一体となって物語を進める文楽は、ユネスコより世界無形遺産として宣言された日本が世界に誇る人形劇だ。独特の上演形式は、フランスの太陽劇団やウォルト・ディズニーのミュージカル『ライオンキング』など、世界の演劇人に様々な影響を与えてきた。世界に類を見ない三人遣いは、「かしら」と呼ばれる首を遣う主遣い(おもづかい)、左手を遣う左遣い、もっぱら足を遣う足遣いが呼吸を合わせて1体の人形を操るもので、その豊かな表現力は「生きるかのごとく」といわれる。三世桐竹勘十郎は人形遣いになって42年、今もっとも華のある人形遣いだ。「梨園」と呼ばれる代々役者の家系が芸を継承する歌舞伎と異なり、文楽は本人の才能が第一。人形遣いの家系はないが、人間国宝の二世桐竹勘十郎を父に生まれた勘十郎は、中学時代に文楽に魅せられ古典芸能の世界に飛び込んだ。吉田簑太郎として足遣い、左遣いと長い修業を積み、2003年4月父の名を襲名。文楽の大黒柱を担う人形遣いである。
(聞き手:奈良部和美)



──文楽は何度も海外公演をしています。2008年3月にはフランス公演にいらしたばかりですが、外国の方には文楽の見どころや魅力をどのように紹介されるのですか。
 特に外国の方だからと意識はいたしません。日本でも文楽を見たことのない方はまだまだ大勢いらして、初めて見る方からはよく、「どこをどう見たらいいのか。どう聞けばいいか」とご質問をいただきますが、演じる私どものほうから、ここを見てくれ、聞いてくれとは言いにくいものです。演目も大きく、歴史物語の「時代物」と庶民の世界を描いた「世話物」の2つに分けられますし、それぞれ何十とある演目ごとに見どころも違いますから、ひとくくりに「ここが見どころ」とは言えません。
 文楽は今から300年ほど前の方が考え出された日本独特の、本当に珍しい演劇形式です。3人で遣う人形と浄瑠璃を語る太夫と三味線、この三者が一体となって物語を進めていく。三人遣いの人形は人間を超えるといったらおかしいですが、人間にはできないいろいろな表現ができますから、最初はどうしても人形に目がいくでしょう。それはそれでいいのですが、文楽は太夫と三味線、人形の三者がうまく合わさってのもの。太夫にも三味線にも魅力があって、いろいろな見方のできる面白さがあると思います。
 本当は浄瑠璃の内容を理解していただければ、日本人の考えていることや風習、情が分かって、より楽しんでいただけるのですが。訳を字幕で出したり、解説をしても、外国では浄瑠璃の内容を理解して見ていただくのはなかなか難しい。江戸時代に書かれた浄瑠璃の言葉が分かりにくいのは日本の若い方も同じなので、日本の公演でも国立劇場では補助的に字幕を出しています。「字幕があったので、よく分かりました」という人もいらっしゃいますが、どんなものかなと思います。字幕があれば、ストーリーや太夫が何を語っているかは分かるでしょうが、お芝居が本当に分かったかというと、そうではない。やはりそこは字幕を追うのではなく、じっくり舞台を見ていただきたいと思います。

──人形を3人で遣う人形劇は世界で文楽ただ一つ、と言っていいのでしょうか。
 私の知っている限りでは昔はなかったと思います。今はいろんな遣い方があるようです。これまで2回、フランスに文楽人形の遣い方を教えに行きましたが、そうした講習を受けた方たちが三人遣い、四人遣い、五人遣いと複数で人形を操ることをされています。今では、世界のあちらこちらで文楽の形式の遣い方が行われているようです。
 教えに行ったのは、フランスのシャルルヴィル・メジエール市にある国際人形劇連盟(Union Internationale de la Marionnette UNIMAウニマ)の国際人形劇研究所で、3週間の夏期講習のようなものでした。人形遣いだけでなく、演出家や俳優、バレエダンサー、いろいろな方が世界中から来ていました。文楽の人形の遣い方の基本が足であることをまず覚えていただきたかったので、この時は人形の足を木から作ってもらいました。そもそも何十人という受講生の教材になるほど足の数はありませんし、モノがなければ説明ができませんから、体験しながら学んでいただこうと考えたわけです。木は現地で用意していただいて、膠(にかわ)と胡粉(ごふん)を混ぜて足を白く塗るんですが、これは日本から持って行きました。
 角材を切って、足を彫り出すところからやるんですから、受講生は何でこんなことをやらされるんだろうと感じていたでしょうね。実は私は三人遣いを教えに行ったんじゃなくて、「三人遣いは難しいですよ、下手にまねをしないでね」ということを伝えたかった(笑)。文楽の三人遣いは主遣い、左遣い、足遣いの3人がお互いに息を合わせ、無言で意思を伝達し合う。これは身体でしか覚えられないし、3週間や4週間勉強して、ハイ出来ましたというものではありません。ですから、私どものやっていることから何か参考にされるのはいいけど、大変難しい、時間のかかるものでございますということを身をもって知っていただきたくて、足から作ってもらったわけです。すると、「なるほど」(笑)と、みなさん理解してくださいます。
 足遣いをやってもらいましたが、外国の方は背の高い方が多いので、中腰で足を動かすのはとてもしんどいんです。でも、ひとりだけ連れて帰りたいほど上手な方がいらした。20代のフランス人の小柄な男性でしたが、3週間で足遣いをほぼマスターした。素晴らしかったですよ。文楽に来ないかと言えばよかったですねえ、初めての外国人弟子になったかもしれない(笑)。
 
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