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Artist Interview
The world of Takayuki Fujimoto, a lighting artist at the forefront in Japan’s multimedia performance scene
日本のマルチメディア・パフォーマンスを支える照明アーティスト藤本隆行の世界
『true/本当のこと』
(2007年9月1日/山口情報芸術センター[YCAM]スタジオB)
ディレクション・照明:藤本隆行(Dumb Type)
振付・出演:白井剛(AbsT / 発条ト)
振付・出演・テクスト:川口隆夫(Dumb Type)
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Photo by Ryuichi Maruo
Presented by Yamaguchi Center for Arts and Media (YCAM)
川口:藤本さんが初めて照明プランを手がけた『OR』は、僕がパフォーマーとして初めてダムタイプに参加した作品です。ストロボがシンボリックに使われていて、真っ白い壁に真っ白い光で、本当にまぶしくて何もわからなくなる。真っ白い光の時に全速力で走り、止まった瞬間に真っ暗になって、またストロボが光ると走り出す。方向感覚も距離感もなくなって、何度も壁にぶつかり、凄く怖い体験でした。

藤本:『S/N』をやっていたときにデータフラッシュというDMX512(舞台照明機器制御のための通信プロトコル)で動く、明るさも速さも変えられるストロボを見つけて、面白そうだからこれを使ってみたいというアイデアが浮かんできた。『OR』ではそのストロボとHMIやHIDという高輝度放電ランプを使って、ホワイトアウト(視界が白一色になって距離や方向感覚を失ってしまう現象)をテーマに作品をつくりました。
 古橋が死んでしまったことをどう受け止めるかというダムタイプの状況もあり、生死のボーダーについて考えていた時期で、メンバーとそういう話しをしながら出来たのがこの作品です。目の前が真っ白になって何も見えなくなるとか、死んでいるのか生きているのか、その境目はどこにあるのかとか、そういうことを話しながらつくっていきました。
 『OR』で試行錯誤して、僕も自分が照明の仕事をやる動機を見い出していました。当時は舞台照明の現場はある意味遅れていて、劇場のインフラが整っているだけに逆に新しいものがあまり入ってこなかった。映像は技術がどんどん進んで、『OR』の時にはもうSMPTE(シンプティー)という同期信号によって映像と音響を同期させることは当たり前になっていました。でも照明はいつまでたってもそれができなくて、手押しで合わせなければいけなかった。
 『OR』からは池田亮司も音楽で参加していたので、音声の別トラックの中にドーンというトリガー音を入れて、それがきっかけで照明が点くという機器を使い、データフラッシュと音を同期させたんです。パターンは限られていましたし、ストロボ以外は手動でしたが、やっと音に合わせて自動的に照明を光らせることができて手応えを感じました。

川口:『OR』には、照明が超高速で点滅して、オン/オフの境目がわからなくなるシーンがたくさんあった。人間の眼が識別できる点滅速度の限界を見たような気がしました。

藤本:蛍光灯も実は点滅しているけど、速すぎて人間の眼にはそうは映らない。ON/OFF──瞬間瞬間で事が生起して終わり、また生まれて終わる──を繰り返しているのに頭の中では一連の時間が繋がって見えている。そういう照明のON/OFFみたいなことが、生と死のグレーゾーンとか、自分が自分自身だと思っているものがどこまでちゃんと自分自身としてあるのか、みたいなテーマに繋がっていきました。
 それで、速い点滅であるとか、人間が見ることができる限界を超える真っ白さとか、池田の場合だと、どこまでが耳で聞こえてどこまでが身体で感じる音なのかとか、そういう限界を探そうといったことが『OR』の裏のテーマになっていた。

坪池:『OR』ではどのような共同作業が行われたのですか? 総合ディレクションをされていた古橋さんが亡くなられて大変だったのではないですか。

藤本:高谷が中心的な役割を果たしていましたが、それまでのつくり方の遺産みたいなものがあったので、これまでのようにみんなでオフィスに集まって延々と話し合った。それでテーマ的なことを共有して、とりあえず出てきたものは全部舞台に上げてみる、という感じでした。構成したら2時間ぐらいあって長すぎるからと、その晩また話し合いをして翌日には40分ぐらいになっていたみたいな(笑)。考え方によっては不安定なつくり方ですよね。

川口:テクニカル・チームだけじゃなくて、パフォーマーからもどんどんアイデアやイメージが出てくる。僕は『OR』で初めて体験したけど、いつまでたっても決まらないけど面白いみたいな感じですよね。

藤本:『OR』で僕が照明をやり始めた頃は、照明の世界でもコンピュータが身近になり、DMXが世界標準の制御規格になるなど新しく始めるにはすごくいいタイミングでした。それ以前は、メーカーによって制御規格が乱立していてコントロールの仕方が違っていたので、各ディマー(自動調光機能)専用のコントローラーを使うしかなかったんです。それがDMX照明卓さえもっていけば、どのディマーに繋いでも制御できるようになった。
 それまで、どれだけ異なる操作卓のプログラミングの仕方を知っているかとか、フェーダーを上げるのが上手いかとか、そういう経験値が幅をきかせていたのに、デジタル化されて誰でも同じスタートラインに立てたわけです。僕としてはとてもラッキーなタイミングでした。
 
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