The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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A history of small theater movement leading up to the present. Eiko Tsuboike (Director of Institute for the Arts)
現代に繋がる小劇場演劇の流れ
第五世代の登場と最新動向
90年代をリードした第四世代の中で次世代に大きな影響を与えたのが、さまざまな題材をとりながらシリアスコメディを展開しているNYLON100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチ(作家・演出家)と、業の深い主人公たちが活躍するデフォルメされた喜劇で、野田秀樹以降の才能として最も評価の高い大人計画の松尾スズキ(作家・演出家・俳優)である。
現在、小劇場演劇シーンの担い手として活躍している60年代後半から70年代生まれの第五世代(長塚圭史、きだつよし、村上大樹、松村武、千葉雅子など)の多くは、松尾チルドレン、ケラチルドレンと呼ばれている。
こうした第五世代に共通しているのが、これまで小劇場演劇のスタイルをつくってきた集団性が極めて低いことだ。日本の小劇場演劇の特徴は、個々の劇団が排他的な集団活動の中で固有のスタイルを模索し、小劇場演劇シーン全体として舞台芸術の表現の可能性を広げてきたところにあったが、逆に言えばその集団性ゆえに、例外はあるものの、ほとんどの劇団はアマチュアから脱皮するために解散せざるをえないという宿命を背負っていた。
しかし、時代が変わり、こうした集団性に依拠しない若い劇団が多くなり、演技スタイルに格段の差もなくなったことから、近年では、小劇場演劇シーンでも劇団の枠に捕われない活動(プロデュース公演、気の合ったアーティスト同士によるユニット活動)がたくさん行われるようになってきた。
こうした背景としては、80年代末から90年代にかけて、東京都内にたくさんオープンした劇場のプログラムとして若い観客に人気のある小劇場演劇の人材を起用したプロデュース公演が行われるようになったこと、小劇場演劇の制作者やプロデューサーが劇団を解散して設立した演劇の企画・制作会社が、そうした公演の制作を担うようになったことなどがあげられる。
新世代の動向として押さえておかなければならないのが、地域演劇の興隆である。90年代後半に入り、これまで圧倒的に東京に一極集中していた小劇場演劇シーンに異変が起こり、大阪、京都から次々と新しい劇作家が台頭し、演劇界を驚かせた。
それには、1985年にオープンして以来、大阪の小劇場演劇の拠点となっていた劇場、扇町ミュージアムスクエア(2003年閉館)と兵庫県伊丹市が開設した公立劇場、伊丹アイホールが果たした役割が大きい。いずれも若い演劇人のサポートに力を注ぎ、94年からはOMS戯曲賞を創設して劇作家の育成を奨励。この戯曲賞の受賞者には、松田正隆、鈴江俊郎、岩崎正裕、土田英生などが並び、松田、鈴江は時を経ずして日本の劇作家の登竜門である岸田戯曲賞を受賞している。また、90年代に日本全国に多数建設された地域の公立劇場などを足がかりにして地域演劇シーンが活性化する傾向にあり、すでに地域を拠点に活動しながら全国に通用する新しい才能も生まれてきている。
この他の小劇場演劇シーンの新しい動きとしては、ワークショップブームと小劇場のオープンラッシュの2点があげられる。ワークショップブームについては、各地に建設された公立劇場が演劇教育プログラムをスタートしたり、演劇の技能を子どもの育成などに役立てる動きがでてくるなど、これまで日本にはなかった社会的なニーズが生まれたことが大きい。小劇場演劇の演出家が自分たちの技能を作品づくり以外で発揮できる場ができたことは、今後の演劇環境を考える上で極めて大きな変化と言える。
小劇場のオープンラッシュについては、バブル崩壊を機に不動産価格が下落し、都心に空きビルなどの遊休施設が急増したのがきっかけ。現在、そうした場所を借りた小劇場がいたるところに生まれており、アマチュア活動の拠点となっている。こうした創作環境、発表環境の変化が10年後の小劇場演劇シーンをどのようなものに変えていくか、注目したいところだ。
 
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