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An Overview
Latest Trends by Genre: Contemporary Dance
コンテンポラリーダンスの最新動向─坪池栄子(文化科学研究所)
民間支援と新世代プロデューサーの活躍

 90年代には民間企業が社会貢献活動の一環としてアートに対する支援を行なうようになった。その中で価値の定まらない新しい創造活動への支援を打ち出し、コンテンポラリーダンスを積極的に支援したのが、アサヒビール、キリンビール、トヨタ自動車、セゾン文化財団などである。

 特に、トヨタ自動車が、「次代の振付家の発掘」を目的に、世田谷パブリックシアターとの協力で2001年にスタートした「トヨタコレオグラフィーアワード」は、新進アーティストの登竜門として定着し、大賞として、砂連尾理+寺田みさこ(2002年)、黒田育世(2003年)、東野祥子(2004年)、隅地茉歩(2005年)、白井剛(2006年)といったアーティストを世に送り出してきた。また、キリンビールが協賛し、横浜市芸術文化振興財団が主催している公演・ショーケース・ワークショップなどを併せた総合フェスティバル「横浜ダンスコレクションR」のコンペティション部門も広くアジアから振付家を公募し、新進振付家の登竜門となっている。

 コンテンポラリーダンスの活況を支えているもう一つの要素が、新世代のプロデューサー・制作者の活躍である。集団単位で活動し、集団のリーダーがプロデューサーを兼ねていた舞踏に対し、コンテンポラリーダンスでは、集団から独立したプロデューサー・制作者が制作会社を設立し、民間や公共から支援を受けながらダンスフェスティバルなど様々な企画を実現する体制に大きく変わってきた。

 また、日本ではまだ活動が始まったばかりのNPO法人もこの領域において大きな役割を果たすようになっている。特に、アーティストなどを会員として2001年に設立された「NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク」の存在は特筆に値する。

 アーティストの情報発信やチケット販売などを行なっているほか、NPO法人設立準備中の2000年から複数組のアーティストのショーケースを全国巡演する「踊りに行くぜ!!」(開催地のアーティストも育成目的で参加)をスタート。当初4都市8アーティスト(組)での実施が、2007年には21都市49アーティスト(組)となり、活動が飛躍的に拡大。開催地の主催団体には、公立・民間劇場はもちろん、公立美術館、自治体、ダンス系のNPO、美術系のNPO、まちづくり系のNPO、地元劇団といった、ダンスの文脈に留まらない幅広い担い手が名乗りを上げており、それだけをみても、この8年間におけるコンテンポラリーダンスの社会的な広がりを伺わせる。

 また、アーティストを小中学校に派遣しているNPO法人芸術家と子どもたちの活動や、コンテンポラリーダンスのアーティストを公立文化施設に派遣して公演とアウトリーチを行なう財団法人地域創造の事業などもあり、「誰でもがダンスに触れられる社会環境づくり」が進展したことがここ10年の最大のムーブメントと言えるのではないだろうか。

 こうした新しい時代となり、アーティスト側の意識も大きく変わってきた。これまで横の繋がりを嫌っていたアーティストたちが社会との関りを真剣に考えるようになり、学校でのアウトリーチが職業になるアーティストも少ないながら生まれている。また、こうした活動をきっかけに地域との草の根交流がはじまり、地域に滞在しながら市民と作品を創作するアーティストも表れるなど、社会とコンテンポラリーダンスの新たな関係を踏まえた創造活動の模索もはじまっている。こうした環境が日本でどのように定着するかは、まだ、不透明だが、コンテンポラリーダンスの開放性が新しい時代のシンボルになるような予感がする。
 
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