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荒川、神キラーチューン
荒川、神キラーチューン
□字ック第十一回本公演『荒川、神キラーチューン』
(2016年6月29日〜7月3日/東京芸術劇場シアターウエスト)
Data
[初演年]2014年
[上演時間]
[幕・場数]
[キャスト]
Japanese Drama Database
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Play of the Month
2017.1.18
Arakawa, God Killer Tune by Kana Yamada 
山田佳奈『荒川、神キラーチューン』 
 レコード会社のプロモーターという異色の経歴をもつ劇団・□字ックを率いる劇作家・演出家・俳優の山田佳奈が2014年に発表し、「CoRich舞台芸術まつり!2014春」でグランプリを獲得した代表作(2016年再演)。中学校の女性教師になった主人公の渋谷ショーコ(私)が、現在と過去を往復しながら漫画家を夢見て挫折した自分、友達を救えなかった自分と向き合う。カラオケルームを主舞台に、大声で次々に歌うパワフルなJ-POPと過去の苦い人間関係がクロスする青春“懺悔”劇。
 カラオケルーム(舞台背景はカラオケの映像が流れるスクリーンになっている)。ショーコ(中学生)は、そこで母親から離婚を告げられる。大人になったショーコ(私)が、舞台脇からその様子を見ながら、「ほれ見たことか、って思った。やっぱり神様なんてどこにもいない」と、吐き捨てる。

 荒川にある出身中学の教師になったショーコは、同僚との結婚も決まっている。今日は、学校の応接室で体育の女教師・山辺とともに、ストーカー被害を訴える女生徒と話し合っている。屁理屈ばかり並べる彼女に辟易する二人。学校ではトイレでの盗撮事件も起こっている。

 「あなたの味方だから」と言うショーコに、「じゃあ先生は、私が殺されそうになったら代わりに殺されてくれますか?」と迫る女生徒。その言葉をきっかけに、中学時代にカラオケルームの店員だった彼氏に殺された水野先生のことがトラウマのように蘇り、ショーコは回想をはじめる。

 カラオケルーム。離婚をきっかけに転校したショーコが、新しく友達になった百瀬と漫画談義をしている。ショーコの夢は漫画家。そういう二人を見下すタレント志望の森田や小林など奔放な女生徒たちとのたまり場にもなっていたため、彼女たちに見つかり虐められる。その中のひとり、シオリはショーコと二人になると、ブランキージェットシティーのCDを貸してあげると声をかけ、「赤いタンバリン」を歌い出す。

 再びカラオケルーム。仲良くなったショーコとシオリがカラオケを楽しんでいる。ウルフルズも奥田民生もエレファントカシマシも、シオリに教えてもらった。妙に明るいシオリだが、実は母子家庭で、宗教にかぶれている母親から虐待を受けていた。シオリが問う。「神様ってほんとにいるのかな?」。

 学校の教室。ショーコが漫画の中で森田の悪口を描いていることがバレて揉める。森田は思い通りにならないショーコを傷つけるように、仲良くなったシオリは嘘つきで、カラオケ店の店員とも寝ていて、ショーコは利用されているだけだと罵る。

 現在のカラオケルーム。仕事を終えた女教師のショーコと山辺は、彼氏のこと、生徒のこと、世の中のことを愚痴っている。そこに遅れてやってきたショーコの婚約者の室も加わるが、ショーコはなぜかよそよそしい。室は、先日刺されたグラビアアイドルの名前が、森田だったとショーコに告げる。

 大人になった森田は売れないタレントになっていた。マネージャーから体操着でのグラビア撮影を迫られ、強く抵抗する。森田は、「じゃあ私のこと殺してよ」と迫る。

 過去の教室。水野先生が彼氏とうまくいっていないことを、生徒であるショーコに打ち明けている。鳴り響く携帯。カラオケのスクリーンに、「この電話の後、20時間経って、水野先生が、荒川の河川敷で、ブルーシートにくるまれた状態で発見された」との文字が映し出される。

 過去のカラオケルーム。百瀬はいじめられている腹いせに、漫画の中で森田を殺せとショーコにしつこく言うが、「これは私だけの世界だから」とショーコは拒絶する。仲違いした百瀬と入れ替わりにやってきたシオリに、人の気持ちがわからないと当たり散らすショーコ。シオリは何事もなかったかのように笑顔を浮かべ、人の気持ちがそんなに簡単にわかるのなら、「じゃあ、うちの親殺してよ」と言い、いつか自分を漫画に描いて欲しいと言い残して去る。

 大人になった森田、小林らがカラオケルームで久々に会っている。小林は憧れていた先輩と結婚したが、夫と森田が不倫をしていることがわかり、問い詰める。キレた小林が包丁を持ち出す。

 水野先生が亡くなった直後の終業式の日の回想。シオリが転校することになったと言う。いつもと変わらぬ教室の風景に、大人になったショーコは、「何か違くないですか」と疑問を口にする。すると場面が「赤いタンバリン」が大音量で流れるカラオケルームに転換し、ショーコは、包丁を持って水野先生を追いかけている男の頭にマイクを振り落とす。

 ショーコと山辺は今日もストーカー被害を訴える女生徒ともめている。あまりに身勝手な彼女の態度に、「問題なのは全部自分でしょう」とキレるショーコ。そこに室がかけつけ、ショーコをなだめようとするが、「制服姿の女の子をホテルに連れ込み、イヤラシイ写真を撮影しているようなあなたに触られたくない」と言い、学校での盗撮事件も室の仕業に違いないと叫ぶ。ショーコは何を信じたらいいのか、もうわからない。

 最後にカラオケで会った時のシオリとショーコのシーンが蘇る。大人になったショーコが語る。──最近になって、シオリちゃんが母親からの虐待で死んでいたことを知った。守らなければならなかった、信じなければならなかったのに。それが出来なかった子どもの自分。自身の過去を懺悔するショーコを抱きとめる室。大きな声で叫ぶ「大嫌い」の言葉。

 カラオケルームで、漫画家になった百瀬が編集者と打ち合わせをしている。社会にはいろいろな出来事が氾濫している。「じゃあ、何やってんだと思う?神様は」と百瀬がつぶやく。

 カラオケのイントロが流れる中、暗転。

プロフィール:
1985年生まれ。劇作家・演出家・俳優。□字ック主宰。レコード会社のプロモーターを経て、2010年に□字ック旗揚げ。以来、脚本・演出・選曲を担当し、俳優としても出演。多様化する現代社会のコミュニケーションの欠如や、大人になりきれない自分との葛藤を描き、デリバリーヘルスを舞台にした『タイトル、拒絶』(2013年)でサンモールスタジオ最優秀演出賞、ひとりの女性の過去への後悔を描いた『荒川、神キラーチューン』(2014年)で演劇ポータルサイト「CoRich 舞台芸術まつり!2014」グランプリ、サンモールスタジオ最優秀団体賞受賞。映画『夜、逃げる』(2016年)監督・脚本など、劇団外部での活動にも意欲的に取り組む。
 
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