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地獄谷温泉 無明ノ宿
地獄谷温泉 無明ノ宿
庭劇団ペニノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』
(2015年8月27日(木)〜30日/森下スタジオ・Cスタジオ)
撮影:杉能信介
Data
[初演年]2015年
[上演時間]2時間5分
[幕・場数]1幕7場
[キャスト]男4、女4(うち声のみの出演1名)
Artist Interview
Play of the Month
2016.4.13
Jigokudani Onsen, Mumyo no Yado (Jigokudani Hot Springs, Ignorance Inn) by Kuro Tanino 
タニノクロウ『地獄谷温泉  無明ノ宿』 
 小劇場から野外まで多彩な上演場所で、人間の心象や妄想を具現化したような美術で空間を構築し、人間の深層に迫るタニノクロウ。『大きなトランクの中の箱』(2013)に続いて回転舞台を用いた本作では、山奥の湯治場に招かれた人形遣いの父子、客らを巡る一夜の出来事を描く。第60回岸田國士戯曲賞受賞作品。
 北陸の山間にある古い湯治宿。回転舞台には「玄関」「客間(1階が男部屋、2階は女部屋)」「脱衣場」「湯殿」の4面があり、中央には中庭。折々に老女の声でナレーションが入る。

 第一場。秋の午後。古い湯治宿に荷物をいくつも持った黒づくめの男・一郎と小人症の老人・百福が訪れる。二人は人形芝居を行う人形師で、宿からの依頼でやってきた。地元の湯治客、老女・滝子が従業員はいないが、帰りのバスがないから宿に泊まるよう勧める。

 第二場。一郎は百福を部屋に残してバスの時間を確かめにいく。事故で視力を失い、湯治に来ている松尾が戻り、百福に身の上を語る。戻って来た一郎は宿に一泊するしかないと百福に告げる。宿には三助(湯の管理や清掃、客の背中を流すなどする者)しかいないと松尾。
 温泉街で芸妓をしている文枝といくが浴衣姿で現れる。滝子は二人に人形師のことを告げる。部屋で三味線の稽古を始める二人。松尾は、隙を見て父子の荷物を調べる。松尾は一郎を湯殿に案内しながら、「お二人の身体が見てみたい」と言う。

 第三場。湯殿に入る百福の姿に興奮し、狼狽する三助。一郎の脱衣を凝視する松尾も、ひどく興奮している。

 第四場。湯の中で寝入る百福。松尾は人形芝居を見てみたいと言うが、一郎は取り合わない。眠っていたはずの百福から、「あなたの探している“こころ”というものは、どこにもない」と言われ、松尾は逃げるように湯殿を出る。
 入れ替わりに滝子が現れ、三助に「今夜いくを頼む」と言う。かつてあった不妊に悩む女の客を三助が抱き、子づくりを手助けする風習がまだ行われているのだ。
 
 第五場。百福が部屋に戻ると、好奇の気持ちを抑えられない松尾は逃げるように散歩へ出かける。
 酔った文枝といくが帰ってくる。二人は男部屋に入り人形芝居をねだり、先に三味線を披露し、その音色にひかれ滝子もやってくる。百福が取り出した人形は裸で奇形。百福は人形に語りかけ、一郎が弾く胡弓に合わせて踊らせ、やがて二人でダンスを始める。唖然とする文枝といく。感謝する滝子。中庭で盗み見していた三助は感動で涙を流す。
 戻って来た松尾は、眠りにつこうとする一郎に、この宿がかつて「無明ノ宿」と呼ばれていたこと、それは仏教用語で「迷い」の意味だと話す。周囲を窺いつつ、そっと人形を取り出し触れる松尾。異形に驚き、松尾は部屋を飛び出す。
 静かに立ち上がり、歩き始める一郎に合わせ、舞台が回り始める。脱衣所で抱き合う三助といく。温泉の源泉をがぶ呑みする松尾。すすり泣く文枝と煙草を吸う滝子。次々と変わる場面を一郎がたどるうち、空が白み出す。

 第六場。早朝。女三人が湯にやって来る。力なく座っている松尾。お構いなしに口三味線で稽古をする女たち。
 そこへ父子が現れ、百福は人形を入浴させる。驚く女たち。薄く笑う一郎。夜呑んだ大量の湯を嘔吐する松尾‥‥。
 老婆の声が、特別な夜だったと告げる。湯音に重機音が重なり、その音は蝉の声に変わる。

 第七場。夏の昼。宿は相変らずの佇まい。赤ん坊の泣き声が聞こえ、授乳するいくが見える。「いつでも、あなたのお越しをお待ちしております」の声に、新幹線の通過音が響く。
 暗転。

プロフィール:
1976年生まれ。富山県出身。庭劇団ペニノの主宰、座付き劇作・演出家。2000年、医学部在学中に庭劇団ペニノを旗揚げ。以降全作品の脚本・演出を手掛ける。2009年、『苛々する大人の絵本』がベルリンのHAUで行われた「Tokyo-Shibuya」に招聘されたのを皮切りに、国内外の演劇祭に参加。2015年3月、ドイツ・クレーフェルトの公立劇場Theater Krefeldで滞在制作した新作『水の檻(Käfig aus Wasser)』を発表。近年の作品に『チェーホフ?!』(2011)、『誰も知らない貴方の部屋』(2012)、『大きなトランクの中の箱』(2013)、『タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ』(2015)、『ダークマスター』(2003、06、16)など。2015年に初演した『地獄谷温泉無明ノ宿』で第60回岸田國士戯曲賞受賞。
庭劇団ペニノ http://niwagekidan.org
 
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