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俺節 俺節
『俺節』
(2017年5月28日〜6月18日/TBS赤坂ACTシアター)
撮影:阿久津知宏
Data
[初演年]2017年
[上演時間]
[幕・場数]
[キャスト]
Japanese Drama Database
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Play of the Month
2017.8.7
Orebushi by Mitsunori Fukuhara 
福原充則『俺節』 
 昭和の時代を生き抜いた庶民の心情を歌い上げ、人生を支えた“演歌”。その演歌の名曲と演歌歌手を目指して田舎から上京してきた主人公コージの生き様を重ね合わせた土田世紀の大人気漫画が原作。劇作家・演出家の福原充則が戯曲化。不器用に、みじめに、愚直なほど泥臭く奮闘するコージの青春物語を通じた見事な演歌論。
<第1幕>

 時は90年代。演歌の道を志す青年コージは、祖母が借金して持たせたスーツを握りしめ、北津軽郡のさびれた港町から上京する。演歌の大御所・北野波平に弟子入りの直談判をしようとするが、訛がきつい田舎者のコージは相手にされず、付き人たちに阻まれる。

 北野から破門されてしまった弟子のオキナワが通りかかり、「一曲歌わせて決めればいい」と提案。しかし、コージは極度のあがり症で歌うことができない。失敗したコージを、オキナワは人生にどん詰まった怪しい者たちが流れ着くドヤ街「みれん横町」に連れて行き、歓迎される。

 そこにヤクザから逃れた外国人の女(テレサ)が現れる。持ち前の正義感から、殴られても、殴られてもヤクザに立ち向かうコージ。必死になったコージは、火事場の馬鹿力で我を忘れ、そこにいるみんなが思わず聴き入る演歌を絶唱し、気絶する。

 オキナワはコージを励まそうと、ストリップ劇場「バスエ」に連れて行く。そこでは不法就労の女たちが働いており、その中にヤクザに連れ去られたウクライナ人のテレサもいた。売春を強要されていた彼女を助けたい一心で、自分が歌ってお金を払うと強がったコージ。故郷への思いを綴った「北国の春」を歌おうとするが力が発揮できず、ボーイにつまみ出される。

 思うように声が喉から出ないコージは生活のために土方仕事を始め、すっかり横丁の住人になっている。そこに流しの演歌歌手・大野が通りかかり、辛い日常を生きる住人たちにせがまれるまま、ささやかな人生を謳う「暖簾」を歌う。大野の歌は人々の心に寄り添い、誰しもに「自分のための歌だ」と思わせる力があった。歌える時と歌えない時の違いが自分でも分からず混乱していたコージに、大野は言う。「言いたいことがうまく言葉にできなくて、やっと喉から出て来てみたら、歌になっちゃったんだろ?」

 コージとオキナワは大野に弟子入りし、二人は歌手とギター弾きのコンビを結成。コージは流しとして人前で歌う修行をはじめる。偶然、北野が店を訪れるが、客に合わせるだけのコージの歌を聞いて、「歌を否定されたら自分が否定されるような歌を歌え」と言い残して去る。実は大野と北野は、かつてライバルと言われた間柄だった。

 偶然、道で再会したコージとテレサはお互い惹かれていることに気づく。ストリップ劇場の女たちと、横丁の住人たちが協力し、テレサを足抜けさせることに成功。みんなに迷惑がかかると躊躇するテレサの背中を押したのは、コージが必死で絞り出すように歌った、「死ぬまで一緒にいよう」と伝える愛の歌「命くれない」だった。

<第2幕>

 コージとオキナワが住むアパートにテレサが同居する。幸せで緩みきって野心がなくなったコージ。いらだつオキナワはコンテストに引っ張り出すが、出来レースで敗退。歌を聴いていた芸能プロダクションの社長・戊亥に声をかけられるが、スカウトされたのはコージのみだった。

 テレサは彼の足手まといにならないよう、自ら警察に連絡し、不法滞在で強制送還される道を選ぶ。

 オキナワと決別し、テレサも失い、祖母のスーツも脱ぎ、訛りも直し、がむしゃらに取り組んだコージだったが、芸能界の醜いしがらみに巻き込まれ、デビューを逃す。

 一方、チンピラとなったオキナワは、北野から金をゆすろうとするが、座敷牢に監禁されてしまう。オキナワの才能を見抜いた北野は、「貴様のような人間のために演歌はある」と自分の曲をつくることを勧める。

 少しの間に寂れてしまった「みれん横丁」。カラオケ時代の到来で流しの仕事が減り、大野は仕事を探している。舞い戻って来たコージは、目標を失い、途方にくれていた。「夢も希望も女もプライドもなくなって、やっと俺とちょうどよくなった」と、オキナワは魂を込めて書いたオリジナル曲「俺節」の楽譜を渡して去る。

 再び演歌に向き合う気持ちになったコージは、オキナワと野外コンサートの前座を務めるが、アイドル目当ての観客のヤジで本領を発揮できない。逃げ腰のコージの耳にテレサの声が届く。

 強制送還される日、バスエ劇場の女たちがコージにひと目会わせようと引っ張って来たのだ。コージとテレサは互いの思いを確認する。雨の中で「俺節」を魂で歌いあげたコージを見届け、テレサは静かに去る。

 翌日の新聞にコージの記事はない。横丁の住人たちが「自分たちはちゃんと聴き届けた、心震えた歌だった」と伝えるため、集まってくる。光が射し、遠くのほうからコージとオキナワが歩いて来る。

プロフィール:
1975年生まれ、神奈川県出身。
02年に旗揚げした劇団「ピチチ5(クインテット)」を主宰する一方で、ユニット「ニッポンの河川」なども立ち上げ、幅広い活動を展開している。生活感溢れる日常的な光景が、飛躍を重ねて宇宙規模のラストへと結実するような物語作りと、少人数で多くの役を演じ分ける独創的なスタイルが持ち味で、09年には宮﨑あおい主演『その夜明け、嘘。』を作・演出し、注目を集める。プロデュース公演の演出や脚本提供も多く、09年には要潤主演『サボテンとバントライン』を作・演出、11年には『美男(イケメン)ですね』の脚本・演出を手がけ、赤坂ACTシアターに進出。また12年には劇団「ベッド&メイキングス」を旗揚げし、野外劇を含む多彩な作品を上演。
映像分野では、CBC『占い師 天尽』(主演:片桐仁)にて、テレビドラマ初執筆、17年には連続ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』の全話脚本。15年には映画『愛を語れば変態ですか』(主演:黒川芽以)で監督デビューを果たした。また、WEBマガジン「チェリー」にて16年より連載中の、『オチマンポコ論』も好評を博している。
 
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