The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
The Kunsten Festival des Arts, making Brussels a center generating new trends in contemporary art
現代アートの潮流を生み出す震源地 ブリュッセルのクンステン・フェスティバル・デザール
クリストフ・スラフマイルダー
──それでは、いよいよクリストフさんがディレクションされた2007年以降のフェスティバルにフォーカスしていきたいと思います。まずは基本的な情報からお伺いします。まずフェスティバルの運営組織ですが、非営利団体(アソシエーション)の形態をとっていますね。団体の理事はどういった方々ですか?
 理事は、文化や思想のジャンルの人物たちで、全員ベルギー人です。やはり理事の構成もフランス語圏、フラマン語圏両方のバランスには気をつけていまして、プレジデント(理事長)も二人います。彼らは皆、政治からは完全に独立した人物たちです。政治中枢とのパイプ役は果たしてもらえないかも知れませんが、逆に政治的な圧力からは一切自由であるという点で、非常に良いと思います。理事会は年に4回ほどしか開催されませんが、彼らは一種のコントロール機関として機能しています。彼らは決してプログラムに介入したり、私に何かするよう強制したりはしませんが、私がプログラムを発表する前には相談して意見を聞いたりできる貴重な人々です。また毎年フェスティバルが終わった6月には、一緒にフェスティバルの総括をして、評価にも立ち会ってもらいます。ですから理事会は私にとって、コントロール機関であると同時に、貴重なレフェランス(拠りどころ、参照すべきもの)でもあるのです。1994年の設立当初にフリー・レイソンが集めた人物もいますし、その後新しく加わった人もいます。

──次に事務局チームについて伺います。芸術監督のクリストフさんに対して、アドミニストレーションを統括するコ・ディレクターがいらっしゃいますよね?
 はい、ロジェ・クリストマンといって、財政面やアドミニストレーションを担当するコ・ディレクターがいます。この共同ディレクション体制は非常に貴重なもので、彼がファンドレイズや各プロジェクトの組織運営に集中してくれるおかげで、私は芸術面のプログラムに集中することができます。彼は私より早く2001年からチームに入り、私と彼の共同ディレクションは公式には2006年6月からです。

──2人のディレクターのほかに、常勤スタッフは何人いますか?
 この質問は、本当に答えるのが難しいですね。9カ月、10カ月の間業務をお願いしている人たちもいますが、彼らは100パーセントの常勤スタッフではないにしても、期限つきの雇用契約に基づいて働いてもらっています。常勤スタッフとして、つまり無期限の雇用契約のもとに働いているのは、私とロジェを含めて6名ですね。加えて4名が、9カ月ないし10カ月間働いています。以上の10名が、フェスティバルの核となるスタッフです。そのほかに、多くの短期雇用スタッフがいます。彼らは1月、2月からフェスティバルの終わる5月まで働いています。

──KFDAといえば、フランス語、フラマン語、英語の3カ国語で書かれた分厚いプログラムや、観劇前に配られるプレスリリースのテキストの量と質が素晴らしいですね。また海外演目の字幕も完全にフランス語・フラマン語の2カ国語対応にしていらっしゃいますが、こうした膨大なテキスト作業はどのように行っているのですか?
 まずプログラムの出版やウェブサイトの編集は、核となるメンバーの一人が責任をもって行っています。彼女がすべての情報を集めて、アーティストにもコンタクトをします。プログラムなどの執筆は、フリーランスの人に依頼したり、一部のテキストは私自身が書いたりで、彼女、私、フリーランスが執筆編集チームを結成しています。ここでまたもや言語の問題があるんですが(笑)、私たちのすべての出版物は3カ国語対応なので、フランス語とフラマン語のフリーランスを雇用して、英語は翻訳家に別途依頼する形をとっています。
 作品の字幕については、ずいぶん前から、ある一人の翻訳家とコラボレーションをしています。彼は舞台字幕専門の翻訳家で、他のフェスティバルにも字幕を提供したりしています。国際フェスティバルですから海外のアーティストが使う多様なすべての言語に対応しなければなりません。日本語、ポルトガル語、クロアチア語などなど、とにかく言語が多様です。そこでまず先ほど言った一人の翻訳家に相談して、彼がそれぞれの言語ができる翻訳家を見つけてくる形をとります。また、どの作品も可能な限りオリジナルの言語からの翻訳を心がけていますから、とにかく膨大な作業量です。さらに字幕の映写については、その位置や舞台装置との関係性についてアーティストと直接、徹底的に話し合うようにしています。時には、初日前に何度も字幕つきのリハーサルをお願いする場合もあります。例えば岡田利規さんの時は、日本以外の国で上演されるのがはじめてだったため、字幕あわせに多くの時間を要しました。こういった膨大な作業は、国際フェスティバルとしての選択でもあるのです。観客が外国語の作品をより多くの方法で理解できるよう努力することは、国際フェスティバルとして重要です。

──次に予算について伺います。KFDAは、他のヨーロッパの大規模フェスティバルに比べると、財政的には「ひかえめ」ですよね(笑)。
 はい、「ひかえめ」です。(笑)フェスティバルの総予算は、2,700,000EURO(=4億3200万円/1ユーロ=160円)です。そのうち基礎的な運営費が50パーセント弱です。フェスティバルの総予算の半分以上は作品など芸術面の制作費にあてられるように努めています。この芸術面の制作費のうち、また大部分を共同制作に支出できるように努めています。というのも、私たちのフェスティバルの大前提が、クリエーション型のフェスティバルであるからです。もちろん既に出来上がった作品を招聘することもありますが、プログラムの半分以上は、我々も制作に参加して支援した新作です。ですからこうした芸術面での支出が総予算のかなりの割合を占めてきます。

──共同制作については後ほど詳しくお伺いしますが、KFDAでは経営面、財政面でのストラテジーはありますか?フェスティバルを発展的に存続させていくための基本となる考え方や実践があったら教えてください。
 まず先ほどから申し上げているように、フランス語圏、フラマン語圏の両サイドから資金を導入すること。これはKFDAにとって普遍的な大前提であり、もしどちらか一方からの資金が途絶えたら、我々はフェスティバルを中止しなければなりません。それほどこの問題は我々の存在そのもの、存在意義に関わっていることです。フランス語圏、フラマン語圏双方の文化省とは複数年に渡る契約を結んでいます。フランス語圏との契約が5年、フラマン語圏との契約が4年で、それぞれ更新可能な契約です。この契約では、5年間、あるいは4年間、毎年同じ金額が保障されています。契約の最終年度には、過去5年ないし4年の成果を提出した上で、今後また5年間、4年間で展開したい事業を提案し、次の契約金額を交渉します。この2つの助成金がフェスティバル運営の基礎的な財政基盤となっており、このほかには、複数年にわたる支援を保障する助成金は受けていません。2つの文化省からの助成は、総収入の60パーセント近くを占めています。

──この2つの文化省は、プログラムの内容に介入したりはしないんですか?
 プログラム内容への介入はありません。しかし、私たちと文化省の間の関係は、いわゆる契約に基づいているわけですから、4年ないし5年にわたるミッションや目標を定義し、それを実行に移さなければなりませんし、評価についても、毎年、評価報告書を提出します。財政的な評価に加え、批評なども掲載した内容面の評価も必要です。また4年ないし5年後には、複数年度をまとめた大掛かりな評価レポートと、次なる4年、5年の方向性を示す資料を提出します。これはKFDAに限らず、ベルギーで国からの助成を受ける大規模なカンパニーやアーティストたちに対しても同様です。

──カンパニーも国と4年、5年タームで契約するのですか? 複数年度支援は芸術団体にも適用されるのですか?
 はい。これは良いシステムですよね。特にフラマン語圏では、すべてのカンパニーが同じ時期に契約更新となるため、国にしても、4年後の国内の芸術状況を想像し、長期的な視野にたって選択することができるという利点があります。事業ごとに助成金をばら撒くのではなく、きちんと全体を俯瞰して助成対象を決めることができる。

──いいですね。ぜひ日本の文化庁にも、こうした複数年度の契約に基づく補助金システムを提案してください(笑)。国からの助成の他にはどういう収入源があるのでしょう?
 国以外の助成は、基本的に単年度です。ブリュッセルが属する「地方」、それからブリュッセル市。他にも単年度で申請する助成金はありますが、確実に獲得できる保障はなく、申請可否の結果を知らされるのもフェスティバルの直前、あるいは終わった後の場合もあります。
 また2008年からは、初めてEUからの5年契約の助成金を獲得しました。これはKFDAを含む6つのフェスティバルの共同プロジェクトに対する助成です。ロッテルダム、リスボン、エストニア、ヨーテボリ(スウェーデン)、ボルドー の各フェスティバルがパートナーです。彼らと共に、これから5年間に渡って共同制作のプロジェクトを実施していきます。KFDAはこの5つを牽引するリーダーの役割を担っており、我々が対EUの窓口を努めています。
 以上のような公的資金導入に関しては、だんだん天井に達しつつあるというか、これ以上の増額は望めないという印象をもっています。ですから少しずつ、民間財団からの資金導入も検討しています。ただしベルギーでは民間財団はまだまだ十分に機能していない領域ですし、またその資金導入については慎重でなければならないと思っています。というのも、私はやはり芸術文化への支援は誰よりも公共が果たすべき役割だと思っているからです。
 また、そもそもフェスティバルの規模をこれ以上大きくしたいのかという議論も必要でしょう。過去数年、KFDAでは入場者数(チケット売り上げ数)が2万から2.5万人に達し、特に過去4回は大成功を収め、全演目の動員率も90パーセントを超えています。これ以上観客を増やすことを望むのか、大規模な作品をやることを望むのか、議論が必要です。もちろんこれ以上小さくなりたくはない、ということは明白ですが。あとは、先ほども申し上げたとおり、オリジナルの作品創造のための資金を充実させていきたいとは思っていますが、フェスティバルの規模については、これ以上大きくなるべきかどうか疑問にも思います。3週間に30作品という現状がちょうど良いと思っていますし、そもそも100万人しか人口のいないブリュッセルで、たとえ海外からも多くの観客が来てくれているとしても、それ以上の集客ポテンシャルがあるのか。例えば演目数を2倍の60演目にして動員数を5万人にすることがいいのかどうかは疑問です。やはり自分たちのフェスティバルにふさわしい枠組みというものを見定めることが大切です。
 
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