The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
ポリー・K・カール
ポリー・K・カール氏
(Polly K. Carl, Ph.D.)
プレイライツ・センター(PWC)
プロデューシング・アーティスティック・ディレクター
photo by Keri Pickett

http://www.pwcenter.org
*1 PWCの施設には、最新設備の整った120人収容のウエリング・ジョーンズ・シアター、ミーティング兼リハーサル室、センターを訪れる劇作家たちのためのコンピュータ・ワークステーションや会議室のある広々としたオフィス・スペースがある。
プレイライツ・センター


*2 リージョナル・シアター(別称:レジデント・シアター)は、独自の公演シリーズをプロデュースする米国の非営利プロフェッショナル・シアターの総称。「地域/地方」を意味する「リージョナル」は、元来、ニューヨーク市以外に本拠を置く劇団や、常駐劇団を持つ劇場施設を区別するための呼称。リージョナル・シアターは、1960年台はじめに、フォード財団が大規模な融資を行ったこと(1959年)や、ガスリー・シアターが創設された(1963年)ことで台頭した。現在では、LORT(League of Resident Theaters)と同義に使われることが多い。LORTは、AEAをはじめとするユニオンの規則にのっとって運営することを同意している劇団及びあるいは常駐劇団をもつ劇場。


*3 1963年、サー・タイロン・ガスリーによりミネソタ州ミネアポリス市に設立された全米初のリージョナル・シアターで、近年まで劇場づきの劇団(レジデント・シアター)制で運営されていた。


*4 PWCが毎年7月に2週間かけて行う新作戯曲のワークショップとステージ・リーディング。劇作家、ドラマターグ、演出家、役者が30時間の共同作業で戯曲を推敲し、その成果を一般公開のステージ・リーディングとして発表する。近年は、毎年5人から8人くらいの劇作家が選ばれ、参加している。本年(2008年)で26回目を迎える。
プレイラボ
Elaine Romero working on a play at The Playwrights' Center
Clockwise from far right:
Playwright Elaine Romero, Polly Carl, Annie Enneking, Casey Grieg, Shawn Hamilton, and dramaturg Liz Engelman.


*5 「コア・ライター」は、「PWCの中心作家」という位置づけで、実績のある劇作家がPWCから独立した審議委員会によって選ばれる。「コア・ライター」には、作品サンプルがPWCのウェブに掲載されたり、劇作教授の機会が優先的に与えられるなど、様々な特別サービスを受けることができる。近年、その数は約30〜40人。
Presenter Interview
2008.6.20
The Playwrights' Center of Minneapolis, encouraging US-Japan theater exchange as a resource supporting the development of playwrights 
劇作家育成の専門機関として日米の劇作家交流にも尽力 米ミネアポリスのプレイライツ・センター 
劇作家に対して全米で最大規模の支援を行う組織として知られるミネアポリスの劇作家育成専門機関「プレイライツ・センター(PWC)」。ワークショップ形式の「ラボ」と呼ばれる活動で戯曲の推敲(リサーチ&デベロップメント)を行い、年間40本〜50本の作品を発表。2006年からは、Japan Cultural Trade Network(CTN)、セゾン文化財団らと協力しながら3年にわたる「日米現代劇作家・戯曲交流プロジェクト」を行ってきた。PWCの活動について、プロデューシング・アーティスティック・ディレクターのポリー・K・カール氏にCTNのディレクターである吉田恭子氏がインタビューを行った。
(聞き手:吉田恭子[日米カルチュラル・トレード・ネットワーク・ディレクター])


──プレイライツ・センター(以下PWC)(*1)は、現在全米で最大規模の支援を劇作家に供給している組織ということですが、まず、設立の経緯について聞かせてください。
 1971年のPWC設立当初というのは、米国ではリージョナル・シアター(*2)が出てきたばかりの時期で、ガスリー・シアター(*3)のような大劇場もまだ幼少期にありました。当時、ミネソタ大学で授業を受けていた劇作家達は、「劇作家と戯曲が芝居を創る過程をリードする場所を作る必要がある」と考えました。それがこの組織の始まりです。バーバラ・フィールド、ジョン・オリヴなど5人の劇作家がなけなしの予算で、リーディングや劇作のための小さな機会をつくりはじめました。それが雪だるま式に大きくなって、今の組織となったのです。

──東西海岸の大都市ではなく、中西部の地方都市の一つであるミネソタ州のミネアポリスでPWCが設立され、継続してきたのはなぜでしょう。
 やはり、1963年にオープンしたガスリー・シアターの存在が大きかったと思います。ガスリーのおかげで、ミネアポリスの演劇シーンが活性化し、ガスリーがトップクラスの演出家や役者をひきつけたのに呼応して、劇作家達も自分達がサポートを得られる場所を作ろうとしたのです。また、ミネソタ州は、歴史的に文化と芸術の創造に価値をおき、資金援助をしてきましたから、こうした取り組みが発展する土壌がありました。

──設立から37年後を経て現在、PWCではどのようなプログラムを行っていますか。
 PWCのプログラムをわかりやすく説明するために、私は「PWCへは3つの道筋とそこから派生した小さな道がある」と言っています。まず、第一の道が、「ラボラトリー(実験室、略してラボ)」です。PWCの顔である「プレイラボ」(*4)もこの中に含まれます。1年に大体40本から50本の芝居をこの「ラボ」で創ります。これは、40人から50人の劇作家が、役者、演出家、デザイナー、ドラマターグとの共同作業により、戯曲を深く掘り下げ、推敲する機会を与えられるということです。この「ラボ」での作業が、私はPWCの核となる仕事だと思っています。近年、ラボの規模を拡大するために多額の寄付をある個人からいただいたことにちなみ、「ルース・イーストン・ラボ」と呼んでいます。
 PWCへの2つ目の道が、「フェローシップ(奨学金)」です。毎年、20万ドル以上の金額を劇作家やシアター・アーティストのために確保し、援助しています。フェローシッププログラムを通して、すでに名の知れた劇作家やアーティストだけではなく、若手とも仕事をすることができます。
 そして、PWCにアクセスする3つ目の道が、一般個人を対象にした「ジェネラル・メンバーシップ」と呼んでいる会員制のプログラムです。現在、約700人から800人の会員がいて、年会費を払い、センターから様々な情報を得ています。作家達のための様々な機会や情報、業界の第一人者のブログなどにアクセスできます。主に、インターネットによるサービスです。私達にとって、このサービスは、人々を劇作界に惹きつけ、コネクトしていくためのものです。この方法で、誰でもPWCの活動に参加できるというわけです。まだ戯曲を書いたことのない人でもメンバーになれます。劇作の初心者や若手にとって、この会員制度は、やる気を失わないため、そして助成金申請の機会を知るため、また演劇界のプロの業界に対する考えや発言とコネクトするための手段です。

──「ラボ」についてもう少し詳しく聞かせてください。
 PWCの「ラボ」は、劇作家と戯曲にとって最善と思われるR&D(リサーチ&ディベロップメント)を提供します。作品をできる限り最善の方法で本公演でそのまま使えるものに推敲します。劇作家以外のコラボレイター(共同作業者)も、戯曲推敲の過程に様々なビジョンをもたらしますが、演出家、ドラマターグ、役者、デザイナーが加わっても、戯曲がPWCにある限り、劇作家の声を最優先するのが方針です。
 これは米国でもよくあることですが、私の限られた日本での経験でも、演劇制作は演出家中心の作業になりがちです。演出家自身が、その芝居について、自分の考えを探求するというやり方です。一方PWCでは、戯曲自体を推敲/発展させ、最高のものにすることが目的です。こうした方針をとっている背景として、米国の演劇界では、戯曲が劇作家を完全に離れたものとして存在しているということがあります。劇作家は戯曲のコピーを郵送し、シアター(プロデューサー)はそれを読むだけですから、できる限り台本自体を最善の状態にする必要があるのです。

──ラボの中で一番大きなプログラムである「プレイラボ」の場合、どのように戯曲を選んでいるのですか?
 「プレイラボ」に関しては、これまでは年間約300本から400本の戯曲が送られてきた中から5本程を選んでディベロップするということをしてきました。参加費を払えば、誰でも応募できます。まずは、サンプルを送ってもらい、それをこちらで読み、セミ・ファイナリスト、ファイナリストと、だんだん絞り込んでいきます。「プレイラボ」の審査員は、演出家、ドラマターグ、劇作家たちですが、最終決定は、業界の同僚としっかり相談した上で、私が行ってきました。センターが大きく成長して、あまりにも多くの応募作品が送られて来る様になったので、今ちょうど、「プレイラボ」と「コア・ライター」(*5)プログラムを統合しようと考えているところです。今後は、基本的に「コア・ライター」達の作品を「プレイラボ」でディベロップするという形になっていくと思います。

──最近の例ではジョーダン・ハリソン作『Finn in the Underworld』やリー・ブレッシング作『Body of Water』などのように、「プレイラボ」でとりあげた作品は、約80%が本公演としてプロデュースされていると聞いていますが、素晴らしい実績ですね。
 もちろん、私たちは「ラボ」から出てきた作品が本公演としてプロデュースされることを切望しています。私たちにとって、究極の成功は本公演です。でも、まずその前に、一番重要なことは、劇作家を育てることなのです。私たちは本公演として上演される可能性が高いという理由で、戯曲を選び、それを練り上げるのではありません。私たちは、まず、作家の才能を信じます。そしてその才能を育てた結果として、本当に良い戯曲が生まれ、それが本公演としてプロデュースされることを望んでいるのです。実際、ほとんどの場合、そうなっています。
 それに対して、ほとんどのシアターは、「この芝居はマーケットに受け入れられるだろうか」「うちの劇場にくる観客はこの芝居を気に入るだろうか」と、問うわけです。PWCでは、「この劇作家は刺激的な声(意見)を持っているから、この作品をディベロップしよう」というところから始まります。ですから、PWCがディベロップする作品群は、多様な美意識を幅広く反映しています。キッチンでの会話ドラマもあれば、非常に実験的な作品やミュージカルなどもあります。

──PWCのプログラムは、全て、劇作家と戯曲をサポートし、育てるためにはどうすれば一番いいかという考えに則っているわけですね。
 そうです。設立以来、PWCの方針は、劇作家のビジョンを原動力・羅針盤とすることであり、すべてのプログラムはこの方針にそって展開しています。
 
| 1 | 2 | 3 | 4 |
NEXT
TOP