The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
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Presenter Interview
The Playwrights' Center of Minneapolis, encouraging US-Japan theater exchange as a resource supporting the development of playwrights
劇作家育成の専門機関として日米の劇作家交流にも尽力 米ミネアポリスのプレイライツ・センター
*6 The Playwrights Foundation
1976年に設立された非営利サービス組織。地元サンフランシスコおよび全米の劇作家の発掘と支援を新作を立ち上げ、戯曲を発展させるためのサポートを通して行っている。
http://www.playwrightsfoundation.org/

*7 New Dramatist
1949年に設立された米国で一番歴史のある非営利センター。全米に開かれたメンバーシップ組織で、才能のある劇作家を選び、7年間にわたり支援する無料プログラムなどを行っている。
http://www.newdramatists.org/

*8 The Lark
米国演劇の新しい「声」を発掘、発展させることを目的に1994年に設立された。最初は新作だけでなく古典も含め、ニューヨーク市内の劇場で本公演を上演していたが、最近は、新作と戯曲のワークショップに焦点を移し、国際交流プログラムも活発に行っている。
http://www.larktheatre.org/index.htm

*9 PWCは日米カルチュラル・トレード・ネットワーク(CTN)、セゾン文化財団、アートネットワーク・ジャパン(ANJ)他のパートナーと共同で、日本の劇作家をミネアポリスのPWCに迎え、その作品を英訳してリーディングする「日米現代劇作家・戯曲交流プロジェクト」と、その同時並行プログラムとして、米国人の劇作家を日本に送り、その作品を和訳してリーディングする「アメリカ現代戯曲・劇作家プロジェクト」を2006年から2008年にかけて行っている。

*10 日米カルチュラル・トレード・ネットワーク(CTN)のディレクター、吉田恭子。ポリー・カールに日米劇作家交流プロジェクトの企画を提案した。本インタビューの聞き手。
──PWCより小規模であっても同様の活動をしている組織は他にありますか?
 サンフランシスコには、「プレイライツ・ファウンデーション」(*6)があり、PWCより大分小規模ですが、少ない予算の中で多くの仕事をしています。ニューヨークの「ニュードラマティスト」(*7)は、PWCと同じくらいの規模、ニューヨークの「ラーク」(*8)は、半分くらいの規模だと思います。サンフランシスコの「Zスペース」も多少はPWCのような仕事をしていますが、地域が限定されていて、今挙げた他の組織のように全米を対象としているわけではありません。他にも期間限定の取り組みとして、夏期にディベロップメント・プログラムを行うサンダンス・インスティテューションが良い仕事をしていますし、PWCより前から活動しているオニールの夏期新作戯曲シリーズもあります。

──それらの組織とは、コミュニケーションを取り合いますか?
 ええ、お互いの仕事をサポートしあうようにしています。もちろん、いい意味でのアメリカン・スピリットで、ある程度のライバル意識はあります。資金源は大体同じ場合が多いですから、競争でもありますが、ほとんどの場合は、お互いに良き仲間という関係です。

──PWCでは「米国のシアター・アーティストを世界のシアター・コミュニティーにコネクトする」という貴方自身のビジョンの下、海外とのプロジェクトも行っています。特に2006年からは3年間にわたる日米の劇作家交流事業(*9)を行っています。このプロジェクトで、日本の本谷有希子、松田正隆、永井愛、三氏の作品が英訳され、米国のシアター・コミュニティーに紹介されましたが、海外戯曲の翻訳に関する考え方や、具体的な作業内容を聞かせてください。
 日本との劇作家交流プロジェクトは、PWCが手がけた最初の本格的な国際プログラムです。これまでにも、時々は海外の劇作家との交流はありましたが、日本とのプロジェクトで、初めて、長期的なコミットメントをもって海外の劇作家との交流と翻訳に臨みました。私はPWCのトップに就任した当初からこうした取り組みに対する価値観をもっていました。しかし、最初から、国際プログラムは大変時間がかかるということがわかっていましたから、今から4,5年前に貴方(*10)が企画をもってこられた時から、一つ以上の国との交流プログラムを同時に行うことは難しいと思っていました。
 日本人作家をこちらに招く「日米現代劇作家・戯曲交流プロジェクト」の具体的な作業というのは、一口で言うと、PWCの「ラボ」の過程に日本人劇作家、日米の翻訳家とドラマターグが加わる共同作業です。ただし、準備段階を含め、ほとんどのすべての作業を日米両語で行いますから、少なくとも二倍の時間と労力が必要になります。まず、日本のプロジェクト・パートナーであるセゾン文化財団から招聘作家候補と作品の提案があり、作家の経歴や作品のあらすじを英訳して候補を絞りこみ、必要な場合はサンプルとして戯曲を10ページ程英訳し、参加作品を決めます。それから、日米の翻訳家とドラマターグを選び、翻訳作業に入ります。英訳戯曲の改稿のしかたは、それぞれの翻訳/共訳者にもよりますが、日本人翻訳家から英訳戯曲の第一稿があがると、まず米国人の共訳者との共同作業で改稿して第二稿をあげ、その後、米国側のドラマターグや私自身も改稿に加わります。もちろん、翻訳作業中、劇作家にいろいろと質問をすることもあります。ここまでのすべての作業が準備段階で行われます。その後、日本人劇作家が翻訳者とともにミネアポリス入りし、米国チームに加わり、「ラボ」での作業を行います。
 例えば、本谷有希子さんと松田正隆さんには、前出の「プレイラボ」の作家の一人として、それぞれ2006年と2007年に参加してもらったので、他の「プレイラボ」の米国人作家と同様、10日間〜14日間(期間はその年によって若干違う)、ミネアポリスに滞在してもらい、一日3〜4時間、計30時間のワークショップで、米国人の演出家、役者、ドラマターグ、日米の翻訳家との共同作業をしてもらいました。そしてこの期間中に一度か二度、公開ステージ・リーディングを行いました。「ラボ」のワークショップでは、翻訳家と劇作家はもちろん、ドラマターグ、役者、演出家、すべての参加者が台本の意味を掘り下げ、一行一句、噛みしめるように吟味して、言い換えたり、語順を変えたりします。役者にとって台詞が言いにくかったり、しっくりこなかったりすると、どんどん質問があり、それを米国人演出家が劇作家に確認しながら答えたり、一緒に悩んで、やはり翻訳を直そう、ということになったり、日本語と英語で矢継ぎ早の応答が行き交う現場はなかなか大変です。
 交流プロジェクトの三人目の作家である永井愛さんの場合は、「プレイラボ」ではなくPWCのディレクター・シリーズのラボで参加していただきましたが、プロセスと作業は基本的に同じです。それでも、具体的なワークショップの内容や進め方は、演出家や劇作家をはじめとする「クリエイティブ・チーム」の個性によって少しずつ違います。例えば、永井さんの『片づけたい女たち』は、五十歳を過ぎた三人の幼馴染の女性の会話で展開していくのですが、三人の女性の米国人役者達が、特に戯曲を気に入り、その分非常に活発に意見したので、リハーサルをしていた劇場からロビーに出て、円卓をつくって翻訳を改稿する時間と場所を設けたほどです。
 日本との交流事業について、特に言いたいことは、非常に質の高い作品、共同作業をしてきたということです。日本から私の元に送られてきた戯曲はトップクラスでした。驚くべき才能の作家が日本からでてきています。日本の観客だけでなく、アメリカの観客も共感する可能性を、本当にもっている作品でした。そしてその戯曲は、高い専門知識と技術をもって真に心を配り、時間と労力をかけて翻訳することを要求するものでした。
 また、こちらから米国人作家の作品を日本にもっていき、英語戯曲を日本語に翻訳してステージ・リーディングする作業も同様に大変であり、同様に非常に良い結果を得てきましたが、日本から戯曲を迎えるのと、こちらから持っていくのは、私にとって違った経験となっています。こちらサイドでは、非常に優れた翻訳を提供している手ごたえがあり、英訳された戯曲はどこででも本公演としてプロデュースすることができると感じます。一方、日本での翻訳とリーディングでは、日本人演出家のビジョンが作品に反映され、それが刺激となって米国人劇作家の思考や意識を広げるようです。私が日本語を解さないことももちろんあると思うのですが、日本語訳された戯曲がリーディングの後、どこか他で上演されるかどうかは、ちょっと想像しにくい感があります。
 でも、ちょうど今朝、去年一緒に日本に行った作家のトリスタ・ボードウィンと、彼女の作品を演出した羊屋白玉さんから、Eメイルを受け取りました。彼らが今度は、日米バイリンガル・バージョンの『Doe(雌鹿)』を創って上演すると言ってきたのです。私たちのやっている交流事業が、新しいパートナーシップを作り、そこから新しい作品まで生まれるかもしれないということです。この作品は、私も是非、サポートしたいと思っています。
 一流の作品、素晴らしい共同作業ですが、やはり困難もあります。私自身、学んだことですが、そしてある程度予期していたことですが、戯曲の「翻訳」をしようとするなら、ただ翻訳作業をするだけではすまされないということです。それに関わるすべてのことに完全にコミットしなければなりません。この交流プロジェクトで私たちはそれをしてきたと思いますが、過程に費やす全ての時間とエネルギー、日本から来るメンバー、アメリカから行くメンバーのための経費、そして日米双方の文化を背負った人々がいつも同じ部屋に居て、お互いの知らないことを理解しようと努力すること、それら全てに完全にコミットしなければならない。
 
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