The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Contents
フリー・レイセン
フリー・レイセン氏
(Frie Leysen)

Theater der Welt 2010 キュレーター


Theater der Welt 2010
http://www.theaterderwelt.de/
http://www.ruhr2010.de/
Theater der Welt 2010


Meeting Points
http://www.meetingpoints.org/
Meeting Points


クンステン・フェスティバル・デザール(KFDA)
http://www.kfda.be/
クンステン・フェスティバル・デザール
Presenter Interview
2009.4.27
European arts scene leader Frie Leysen talks about the role and activities of arts festivals 
欧州のアートシーンを牽引するフリー・レイセンが見る フェスティバルのアイデンティティとは? 
1970年代後半以降のベルギーのアートシーンを牽引したアートセンター、De Singelの芸術監督をはじめ、先鋭的なプログラムと若手アーティストの発掘、国際共同制作に力を入れヨーロッパ屈指のフェスティバルに成長したベルギーのクンステン・フェスティバル・デザールの創設など、気鋭のアート・キュレーターとしてヨーロッパの舞台芸術シーンにおいて各方面によりその功績が認められるフリー・レイセン女史。後進キュレーターの育成にも独自の発想を持ち、数々のフェスティバルを成功に導いてきた。彼女の近年の仕事を通して、そのオルタナティブなビジョンと、ヨーロッパにおけるフェスティバルのアイデンティティついて聞いた。
(聞き手:内野儀)


──レイセンさんは、1994年にベルギーのブリュッセルでクンステン・フェスティバル・デザール(KFDA)を創設され、同フェスティバルの芸術監督として長年にわたってヨーロッパのフェスティバルを牽引されてきたプレゼンターのお一人です。あなたの功績や経歴については、このウェブサイトで以前インタビューした現KFDA芸術監督のクリストフ・スラフマイルダーさんが語ってくれています。世界のプレゼンターやアーティストから厚い信頼を得ているレイセンさんは、世界各地の重要なフェスティバルのキュレーターとしても活躍されています。
 このインタビューでは、あなたの最近の仕事と、現代におけるフェスティバルのあり方についての考え方などをお伺いしたいと思います。まずは2007年にキュレーターを務められた中東のフェスティバル「Meeting Points」について教えてください。

 Meeting Pointsは、中東地域の若手アーティストの支援を目的としたヤング・アラブ・シアター・ファンド(YATF)というインディペンデントの組織がイニシアチブを取り、2004年に創設した現代アートフェスティバルです。当初は非常に小さいプロジェクトとしてスタートしました。初年度は1都市でのイベントでしたが、その後3都市になり、2005年度には7都市で同時開催されました。その成功があって、以後は定期的に開催することを決め、その都度異なるキュレーターを招いて作品をセレクションしていくという方法を採っています。2年毎に開催することになっていますが、もっともそこは中東地域でのフェスティバルですから、実際はおよそ2〜3年の周期で開催しようとしています。
 私自身は、2007年度に開催された第5回の「Meeting Points 5」にキュレーターとして招かれました。2007年後半から2008年初頭(2007年11月1日〜12月1日、2008年1月10日〜20日)にかけて11都市を巡回し、最後はブリュッセルで幕を閉じました。私にとって、それは素晴らしい経験でした。KFDAのようにブリュッセルだけで開催するフェスティバルをキュレーションするのとはわけが違います。
 つまり、よく知る地元の観客に対して、彼らに観てほしい作品やアーティストを選んでいくのであれば、ある程度押さえておくべき領域やアイデアなどを働かせることはできますが、中東のほぼ全域で開催するフェスティバルのためのキュレーションとなると、その領域はとてつもなく広いものです。中東地域といっても都市ごとに全く異なります。モロッコやシリアも同じ中東域内ですし、バイロイトとパレスチナの間にも大きなギャップがある。エジプトなどは他の中東地域とは全く異なる姿をしています。とにかく、巨大な相手でしたから、この仕事は私にとって大きな挑戦であったと言わざるを得ません。準備期間も1年弱と本当に短い期間でした。

──Meeting Point 5を組織し、アーティスト、作品のキュレーションをするにあたり、あなたの当初の考えとはどういったものでしたか。
 Meeting Points自体については、私の方針より先にフェスティバルを主催するヤング・アラブ・シアター・ファンド(YATF)の考えがあります。
 私が芸術監督だった最後の年(2006年)のクンステン・フェスティバル・デザールで、YATFのディレクターであるTarek Abou El Fetouh氏に出会いました。彼はエジプト人で、当時カイロからブリュッセルに移り住んでいました。YATFは実際、ヤングといってもさほど若くもなく、アラブといっても本部はブリュッセルにあり、シアターと呼べる劇団や劇場もなく、ファンドといっても基金があるわけではない……そんな名前をもつ団体です(笑)。
 彼らはまず、中東での創造活動の場を求めて、アレクサンドリアの古いガレージを改装し、劇場のような小さなスペースをつくりました。その後同じ手法で中東地域に6つの場をつくり、創造的なプロジェクトを支援していました。そうするうちに、2つの地域同士が協力するようになるなど、徐々に繋がりが生まれます。そのネットワークを拡大するツールとして、まずはその2都市でフェスティバルを催してはどうかという考えが出ました。その時点からフェスティバルの主旨はあくまで、中東出身のアーティストを紹介し、中東地域で活動の機会を与えるというものです。ご存じのように、ヨーロッパではアラブ系のアーティストが色々と紹介されています。現在、欧米ではあらゆる“中東もの”の作品を観ることができます。しかし、彼らのどんな作品も、自国やその隣の国、周辺のアラブ圏のどこにおいても上演される機会はありません。
 つまり、アラブ圏のアートは輸出のための創作で終わらざるを得ないということです。賢いアーティストなら欧米が求める作品をつくり始めるでしょう。それを否定することはできません。そして市場経済主義の世の中であれば、ビジュアルアートのジャンルなどは、その辺は得意だと思います。アラブ世界からやって来たビジュアルアートというだけで、何か大きな問題がベールに包まれた作品のように映るかもしれません。
 もちろん、このような状況はアラブ圏に限ったことではなく、どこの地域においても西側への流通が重要な問題になってきます。そこはたいへん危惧すべきです。ですから、ホームグラウンドをもち、自国で、地元の観客のために創作をすることはたいへん重要だと思います。
 そういう考えのなかでYATFがブリュッセルにオフィスをもつのは、EU本部の近くという一種の国際的なシーンの中にあり、中立的立場でいたいという意志によるものです。
 つまり、Meeting Point5を企画するにあたっても、私はそういった彼らの考えを尊重することから始めました。

──Meeting Pointsは、回を重ねるごとに規模が拡大し、プログラムも充実しています。明らかに成長しているフェスティバルであることがうかがえます。
 そのとおりです。先ほども申し上げたように最初のイベントは1都市で行われました。その後徐々に拡大し、私が手掛けた第5回から、中東地域のアーティストだけでなく世界中からアーティストを招いて、世界中で同時開催をしたいという要望があり、中東9都市(アレクサンドリア、ベイルート、チュニジア、ダマスカス、ラマラ、ラバット、アマン、カイロ、ミニア)に加えて、ヨーロッパ2都市(ブリュッセル、ベルリン)でも開催しました。そこに日本の梅田宏明も参加しています。ベイルートでは、梅田の作品に観客は大喜びでした。現在準備しているのは第6回で、同じく11の都市で開催するようです。
 開催する都市については特に限定していません。ですので、数は増えていきましたが、実際に上演できる劇場や施設をもつ中東の都市はまだまだ少ないのが現状です。カイロなどのように、劣悪な条件のスペースと大きな劇場の両方を使った都市もあれば、ある場所を改造してどうにか劇場にし、フェスティバル後はそこを現地の人たちに寄贈したところもあります。
 
| 1 | 2 | 3 | 4 |
NEXT
TOP