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Japanese Drama Database
Japanese Title: 人魚伝説
English Title: A Legend of Mermaids
Author: 鄭 義信
Author's Profile: 1957年兵庫県生まれ。劇作家。同志社大学中退の後、横浜放送映画専門学院を卒業。'86年劇団新宿梁山泊の旗揚げに参加。「ザ・寺山」で第38回岸田戯曲賞を受賞。崔洋一「月はどっちに出ている」では脚本を担当、キネマ旬報脚本賞、毎日映画コンクール脚本賞など多数の賞を受賞。その後独立。執筆活動に専念する。「千年の孤独」、「人魚伝説」、「明日、ジュルノミーナと」、「アンドレアスの帽子」など著書多数。
First Performance:   1995
Performance time:   2時間
Acts / Scenes: 3幕
Cast: 23人(男13・女10)その他大勢


月夜の公園のベンチでアル中の中年詩人が飲んだくれている。そこへ煙草拾いの老婆がやってきた。よぼよぼの、その老婆に詩人は何故か惹かれるものを感じていた。詩人は老婆と話しているうちに、次第に、子供のころ、家族とともに暮らしていた「ウチウミ」と呼ばれる小さな街のことがよみがえってくる。少年だった詩人は「ウチウミ」に、両親と六人の兄弟たちと一艘の船に身を寄せて、海を越えてやってきた。その街を「ウチウミ」と命名したのは、詩人の父だった。やがて滅びいくその街で、詩人は生涯忘れることのできない罪を犯したのだ。ある日、金魚という名の女が「ウチウミ」のはずれに住み着くようになる。金魚は入水自殺を図ったのだが、四男のアキ男に助けられた。吃音症であるアキ男は仕事にもつかず無為な生活を送っていた。けれども、金魚と出逢ったことで人生をやり直そうと決心する。家族たちや近所の人たちが集まる中、アキ男と金魚は屋台のラーメン屋を開いて、「本当の人生」に向かって歩み始める。アキ男の兄、三男のナツ男はボクサーとして華々しい活躍をしていた。街の人々もこぞってナツ男を応援していた。ナツ男は街の誇りであり、希望であった。しかし、初防衛戦に敗れ、片目を失明するというアクシデントに見舞われる。それ以来、ナツ男は自堕落な暮らしを送るようになり、過去の栄光と酒に溺れるようになった。

落ちこむナツ男に少年の詩人は金魚がかつて売春をしていたと教える。それは幼さゆえの残酷な行為だった。金魚にひそかに思いを寄せていたナツ男は、嫉妬と自尊心からアキ男と金魚のラーメン屋を襲い、金魚をアキ男の見ている前で犯す。怒りと哀しみの中で、アキ男はナツ男に殴りかかるが、無惨に打ちのめされてしまう。絶望に打ちひしがれた金魚に、アキ男は「強くなりたい」と言い残して、去っていった。それから、数年後アキ男はボクサーとなり、憎しみの炎を対戦相手にぶつけることだけを生き甲斐としていた。一方、金魚はアキ男への思いを断ち切ることができずに、たったひとりでラーメン屋を切り盛りしていた。二人は一度だけ邂逅するけれど、切れた赤い糸は二度と繋がることはなかった。アキ男の初防衛戦の日、ナツ男は金魚に別の街で暮らそうと迫った。ナツ男に残されたものは金魚しかいなかった。しかし、金魚は激しく拒絶した。一縷の希望も失ったナツ男は金魚を刺して、金魚ともども河に身を投げた。そのときアキ男は遠くで自分を呼ぶ金魚の声を聞きながら、観客の待つ会場に向かっていった。

ナツ男は一命をとりとめるが、廃人となりはて、金魚は行方しれずとなった。深い傷が少年の詩人の胸に刻まれた。自分がなにもかも駄目にした...。街からひとり去り、ふたり去り、残されたのは詩人たちの家族だけだった。詩人と詩人の両親は新天地を求め、また荒れ果てた海に船を漕ぎ出していった...。そして、「ウチウミ」は消滅した...。「ウチウミ」の切ない思い出から醒めると、詩人は老婆がもしや金魚ではないかと尋ねた。失踪した金魚がどこかで生きているのではないかと、ずっと思っていたのだ。「もしも、わたしが、金魚ならばどうする?」一言、「許す」と言ってほしいと頼む詩人に向かって、「それであんたの気がすむならば言ってあげるよ。許すよ、すべて許すよ。あれは過ぎ去りし夢.....はかない夢だったと.....」と答え、老婆は去っていった。
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