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コンドーム0.01
コンドーム0.01
serial number『コンドーム0.01』
(2019年10月25日〜31日/下北沢ザ・スズナリ)
撮影:保坂萌
Data
[初演年]2019年
[上演時間]2時間10分
[幕・場数]
[キャスト]9人(男9)
Artist Interview
Play of the Month
2020.3.30
Condom 0.01 by Roba Shimori 
詩森ろば『コンドーム0.01』 
 現代とリンクするテーマを綿密な取材に基づいてドラマ化する詩森ろば。生理用品の開発部を舞台にした女性だけが登場する『アンネの日』(2017年)に続く、コンドーム製造会社の新製品開発部を舞台にした“性”を巡る作品。極限まで薄いコンドームの開発に取り組む9人の男性社員たちは、その過程で自らを見つめ直す。
 プロローグ。コンドームを製造する政宗ゴム工業では、年末恒例のイベントのためリハーサルに余念がない。薄さ0.01ミリのコンドーム開発に成功し、意気軒昂な社員たち。営業部の若林により開発を始めた3年前の回想が始まる。

 開発部の村本、機械開発部の日村らの打合せ中に開発部主任・徳井が登場し、薄さ0.01ミリのコンドーム開発を再開する社長命令が出たと言う。プロジェクトの中心となる徳井、村本に日村も加わり、現在の0.02ミリを上回る薄さがいかに難しいかを語る。恋人や妻を相手にコンドームの使用感のモニターをしている社員たち。今ひとつ話題についていけない村本。一方、日村も恋人にコンドーム会社に務めていることを言えずにいた。日村が遅かった初体験について独白する。

企画室。企画部長・川西、営業部の伊達(創業者の曾孫)と若林、広報部・美樹による会議。天使のコスプレをした「コンドーム・エンジェル」(徳井、村本、早川、北澤、日村)がコンドームの作り方を解説する。

開発会議。0.01の顧客満足(CS)を考えるCS委員会の発足が話題になる。徳井は0.01開発の難しさは量産することであるとし、コンドームの不良品は「命の問題」だと訴える。早川が幼馴染の女の子との初体験を独白する。

広報室。美樹がCS委員会に複数部署が関わることの意義を日村と若林に説明する。美樹がモテ続ける人生と、友達の彼女との背徳的な初体験を独白する。

第1回0.01CS委員会。北澤が「女性の意見を集めるための調査方法の見直し」、日村が「日本人のセックスの実態調査」を提案。徳井は「セックス=0.01は誰のものか?」と疑問を呈する。コンドームの主たる購入層は男性で、売り文句も男性目線。開発を進めるうち、0.01開発の目的や対象がわからなくなったと話し、各自が持ち帰って考えることになる。若林が高校2年時の、不器用でごく普通の初体験を独白する。コンドーム・エンジェルがコンドームの歴史を解説する。

実験室。0.01の試作中、トラブルが発生する。徳井が大学の研究室の紅一点だった妻にプロポーズしたこと、初体験は結婚後だったことを独白する。

 街を歩く若林と伊達。CS委員会の課題に悩む若林は、伊達に探りを入れる。コンドーム会社の跡継ぎにもかかわらず、コンドームなしだった高校の先輩との初体験を伊達が独白する。

 資料室。美樹と川西というモテ男ふたりが恋愛とセックスについて語る。川西が既婚の高校教師との初恋と、鮮烈な初体験を独白する。

 開発室。コンドーム・エンジェルがコンドームの正しいつけ方を説明する。幼稚園に入園する娘に父親の仕事を教えられないからと、妻から離婚を告げられたと嘆く北澤。恋人に仕事を隠している日村は意を決し、電話で真実を告げる。北澤は奥手だった学生時代に風俗店で童貞を捨てて以来、順調だったのにと独白する。

 第2回CS委員会。愛妻家の早川は「妻と話し合い、0.01は男女二人のものという結論になった」と口火を切る。日村は、妊娠・出産の過酷さを考えると、「0.01は女性のためにあるのでは」と言う。その考えは現実と「ズレが生じている」と感情的になる徳井。徳井の娘は就職活動中に性被害に遭いかけたのだ。徳井は動物の中で唯一発情期のない「ヒト」の女性の、妊娠・出産の選択権に関わることだから「0.01が誰のためのものかもう少し考えたい」と言う。

 残業中の開発部。村本が徳井に「自分はED(勃起不全)で童貞」と告白し、自分には0.01開発の資格はないのではと言う。村本は、暴力をふるう父親と別れた母に育てられたEDの原因になっているトラウマについて独白し、0.01完成までは仕事を続けたいと言う。日村が登場し、試作が成功しそうだと告げる。
 
第3回CS委員会。「コンドームは男性のもの。だが、使う側の意識を変える必要がある」と徳井が言う。川西が母とのエピソードを語る。16歳の誕生日に母からコンドームをプレゼントされたが、恥ずかしくて包みを開けられなかった。20歳のときに母が死去。包みの中に入っていた手紙には、16歳で望まぬ妊娠をしたこと、女性を思いやれる男性になって欲しいという願いが記されていた。伊達が「安心してセックスし、ある時コンドームなしで子供を持つことを選択する。我々にできるのはそれを手伝うことだ」と言う。

 開発部。北澤が離婚を告げ、妻には他に男がいるらしいと言う。励ます同僚たち。徳井は娘の事件を公にして犯人が左遷されたと告げる。

 エピローグ。0.01は発売と同時に爆発的に売れた。村本と伊達はマレーシア工場に勤務している。「事情を受け入れ一緒に眠ってくれる人ができた」という村本に、徳井は「いろんな形があっていい」と返す。

プロフィール:
宮城県仙台市生まれ。劇作家、演出家。1993年、劇団風琴工房旗揚げ。以後すべての脚本と演出を担当。全国どこへでも飛び回る綿密な取材を経て自身の視点で捉え直し、緊密な対話劇として構築する手腕が高く評価されている。スピーディーかつ演劇知の塊のようなパワフルな演出も特徴。扱う題材は歴史劇から金融、福祉車両の開発から、アイスホッケーまで多岐に亘る。2008年、綿密な取材を基に正面から水俣病問題に取り組んだ『hg』は、新聞を中心に様々なメディアで取り上げられた。10年、日航機墜落事故を扱った『葬送の教室』で鶴屋南北戯曲賞最終候補。13年、日本統治時代の朝鮮を舞台にした『国語の時間』(作:小里清 演出:詩森ろば)により、読売演劇大賞優秀作品賞。16年、岩手県生まれで宝塚歌劇団で活躍した女優・園井恵子が参加していた、広島で被爆した移動演劇隊が題材の『残花』(製作:いわてアートサポートセンター)と、金融業界の内幕に肉薄した『insider』により紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。17年『アンネの日』その他の成果で2017年芸術選奨文部科学大臣賞新人賞。18年に俳優・田島亮とのユニットserial numberとして再始動。20年、映画『新聞記者』により日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞。
serial number(シリアルナンバー) https://serialnumber.jp/
 
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