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馬留徳三郎の一日
馬留徳三郎の一日
馬留徳三郎の一日
馬留徳三郎の一日
青年団プロデュース公演
尼崎市第7回「近松賞」受賞作品
『馬留徳三郎の一日』
(2020年10年7日〜11日/座・高円寺1)
撮影:青木司
Data
[初演年]2020年
[上演時間]
[幕・場数]
[キャスト]
Japanese Drama Database
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Play of the Month
2020.12.4
A Day in the Life of Tokusaburo Umadome by Sanae Takayama 
髙山さなえ『馬留徳三郎の一日』 
 第7回「近松門左衛門賞」受賞作。山深い田舎の一軒家で暮らす馬留徳三郎とミネの老夫婦。近所の老人たちの憩いの場であるこの家に、ある日、息子の部下を名乗る詐欺師がやって来る‥‥。作者の故郷である信州の方言を用い、事実と嘘、忘却と妄想が斑になる認知症が日常となった老人たちの「虚実皮膜」のリアルを優しい眼差しで描いた作品。
 季節は夏。山深い田舎。馬留徳三郎とミネの老夫婦が暮らす一軒家は、近くの老人たちが入れ替わり立ち替わりやって来る憩いの場。今日も同級生のたーさんが来て、徳三郎と縁側で他愛もないおしゃべりを楽しんでいる。ミネも加わり、徳三郎が高校球児だったという話題で盛り上がっていると、東京で働いている息子・雅文から電話が入る。仕事でトラブルがあり、お金が必要になったので部下が受け取りに行くという。

 馬留家に雅文の部下だという蔵本が来る。貯金を下ろしに行った徳三郎を待ちながら、こうさん(上条浩一郎)・松子夫婦と世間話をしている。そこへ上条家の息子のテツが来て、「ここの年寄りはみんなボケている」と言い、年寄りを騙しに来た詐欺師だろうと蔵本を問い詰める。部下なら雅文の似顔絵を描けと言われ、蔵本がインチキな絵を見せると、テツはなぜか納得して去る。息子の後を追う夫を見送りながら、松子はテツが若年性アルツハイマーで、テツの母親は子どもの頃に亡くなり、自分は義理の母だと告げる。

 ひとり残された蔵本のところに、様子を伺っていたミネの友人の俊子が来て、松子は嘘つきだから信じちゃダメと言う。そこに、駐在姿のたーさんが現れる。逮捕されるのではと不安に駆られる蔵本に、どうせ騙すならもっと騙しがいのある家を狙えと近所の年寄りの個人情報をこれでもかと教える。馬留家の夫婦は認知症で、息子の雅文も10代で亡くなっていると告げられ、蔵本は混乱する。

 徳三郎が貯金を下ろして帰宅する。たーさんを見つけて、「駐在さんが探していた」と伝える。徳三郎は、たーさんも俊子も痴呆がはじまっていて、二人ともよく介護施設から抜け出し、駐在さんになりすましたりしてみんなを困らせているのだと言う。倉本は徳三郎から金を騙し取ろうとするが、高校球児時代の思い出話がはじまり、蔵本を「雅文」と呼ぶ。帰ってきたミネが一緒になって蔵本を息子扱いするので、蔵本も仕方なく二人に調子を合わせる。

 まるで家族のようにトウモロコシを茹でて食卓を囲む三人。テツが来て、両親が介護施設から抜け出したと言う。蔵本のことを忘れ、初対面のように振る舞うテツ。映っていないテレビから高校野球の中継音が聞こえてくる。それをじっと見つめる徳三郎とミネ。

 蔵本は、馬留家の居間で朝ごはんの支度をし、まるで本物の息子のように馴染んでいる。そこへ松子がテツを探しに来て、「あんた誰?」と何度も言われることに疲れたとこぼす。ミネは、「忘れた真似。とぼけた振り。騙され続ける芝居。全部演じ分けられたら、ボケ老人の出来上がり」と呟く。テツが見つかった知らせに飛び出す松子を追って、徳三郎、蔵本も様子を見に行く。

 入れ替わりに来た俊子が、ミネと一緒に朝ごはんを食べる。徳三郎との子どもを身ごもった、死んだ雅文くんのかわりとして生みたいと言う俊子に、雅文は海外で働いていると言うミネ。二人の会話は全く噛み合わない。誰が認知症か、何が事実か、何が妄想か、混沌とする中、家に戻ってきた蔵本までが、逃げてきたテツに実は自分もアルツハイマーだと告げる。

 映っていないテレビをじっと見ている徳三郎とミネ。夫のことを忘れてしまったミネに、徳三郎は、かつて甲子園に連れていく約束をした女性がいたと話す。もう帰らなければいけないのに、家を忘れてしまった、自分のことも分からないと呟く。

 ミネは懐かしい徳三郎の匂いに誘われ、「遠い昔の、夏の、土の、汗の、匂い……優勝だ! 甲子園!」と叫ぶ。「一緒に行こう」と言う徳三郎。

 高校野球の中継音が大きく響く。

プロフィール:
1977年生まれ。長野県松本市生まれ、在住。信州大学人文学部卒業。2001年、平田オリザ率いる青年団の演出部に入団。2003年、自らが作・演出を手掛ける「髙山植物園」を旗揚げ(2012年まで活動)。2018年、『馬留徳三郎の一日』で第7回「近松門左衛門賞」受賞。
 
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